Abstract

個人の軽率な行為によって多数のインターネット利用者が誹謗中傷を行うインターネット上の炎上(ネット炎上)が発生すると,アクセスが集中する.これによってサービスを提供するサーバに負荷が掛かり,サービスの続行が困難になる場合がある.これを防ぐために,サーバリソースを増強する必要があるが,管理者がアクセス集中の発生を常に監視することは困難である.アクセス集中時に自動的にサーバの数を増減する手法の1つとして,Amazon Web ServiceによるAuto-Scalingがあるが,予期しないアクセスの上がり下がり(ノイズ)によるサーバのプロビジョニングが原因でコストが無駄に増大する問題がある.この問題を解決するため,SNS(Social Networking Service)における集合知に対し機械学習の技術を用いて,ネット炎上に起因するサーバ負荷の突発的な増大による障害の予測を行う手法を提案する.具体的には,(1)Twitterにおける集合知に対し機械学習を用いて,ネット炎上の事象を予測する新規手法と,(2)事象を予測したら,サーバのプロビジョニングをAuto-Scalingからノイズ耐性の高い方式に切り替える新規手法である2つの組み合わせを提案する.(1)に関しては,「炎上」や「バカッター」の言葉を含むツイートを集め機械学習による分類を行ったり,これらの言葉を含まないツイートを捉えて,ネット炎上に関連するツイートを検知し,ツイートの集合に占めるネット炎上に関連するツイートの割合を評価する.(2)に関しては,Twitterによる検知をした後にAuto-Scalingから,サーバのCPU使用率の計測値を平滑化する手法を用いてノイズによるサーバのプロビジョニングを抑える方式へ切り替えを行い,無駄なコストが発生することなくサーバ負荷への対処が可能であることを評価する.

田原俊一, 中尾彰宏. “SNSによるアクセス集中予測を利用したサーバの自動スケール制御手法”. 信学技報, vol. 115, no. 483, NS2015-254, pp. 499-504, 2016年3月. copyright©2016 IEICE