Abstract:

近年,サイバー攻撃ツールや攻撃代行サービスが,ダークウェブ上に構築されたマーケット(以下ダークウェブマーケット)で取引されており,これを利用することで誰でも高度な攻撃を行うことが可能になってきている.我々は過去の研究で,ダークウェブマーケットにおける,BotnetやDDoS攻撃代行サービスに着目し調査を行い,サービスの種類,価格相場,市場規模,取引が現実世界に与える影響などについて調査・分析・考察した.これらは主に次のような新規性があった.第1にTor上のダークウェブマーケットの統計的分析を行い,実際のDDoS攻撃とサービスに対するレビューのタイミングに相関があることを明らかにし,調査対象の市場としての機能性を示したことである.第2 に,ダークウェブマーケットから得られる情報を分析し,整理し,サイバーセキュリティに活かせる可能性を示したことである.第3に,Tor以外の秘匿ネットワーク (I2P 等)についても調査を行ったことである.本研究ではこれらを踏まえて,統計的分析の効率化を図るために,自動化手法によるダークウェブマーケットから得られる情報の可視化・データレポジトリの提案を行う.また,実際に開発したスクレイピングツールについて述べ,ダークウェブマーケットの情報収集の自動化が可能であること示すと共に,スクレイピング実行に伴い明らかになったダークウェブマーケットのWebサイトとしての特徴を示す.

岩永崇裕, 中尾彰宏. “[奨励講演]ダークウェブマーケット統計分析・可視化のためのデータ自動収集とレポジトリ生成の提案”. 信学技報, vol. 118, no. 124, NS2018-41, pp. 25-30, 2018年7月. copyright©2018 IEICE